ドローンは、高所や人が立ち入りにくい場所にある施設や建物の点検に向いています。
設備の規模が大きく危険な場所に立地していることも多いインフラ施設を中心に、建設現場や工場・プラントなど、さまざまな点検にドローンが活用されています。
道路
路面、高架橋、のり面などの点検にドローンが使われており、特に重宝するのは高速道路の点検です。
高速道路は通行止めにすることが難しいうえ、高架道路や山間部を走る道路の点検には大変な労力がかかりますが、ドローン点検なら少人数・短時間で効率的に点検することが可能です。
鉄道
駅舎、架線、橋梁、トンネルなど、鉄道にはドローン点検が有効なフィールドがたくさんあります。
鉄道は高速道路と同じく山間部などにも張りめぐらされているので、点検の難所が多いのも特徴です。
鉄道各社は定期点検のほか、異常があれば即座に係員を派遣して目視確認を行っていますが、その人的・時間的コストは膨大で、ドローン点検による省力化が期待されています。
最新の情報では、名古屋鉄道が2022年4月にドローンで高架橋を点検する様子を公開。高所作業車による点検と比べて作業時間を最大3割削減できる見通しを示しました。
橋梁
橋梁は国土交通省から5年に1度の定期点検が義務付けられていますが、点検作業には橋梁点検車の使用による通行止めや、作業員の危険がともないます。
また、橋梁は道路橋だけでも全国に約72万橋もあり、莫大な点検コストがかかります。
しかしドローン点検なら少人数・低コストで通行止めも不要なので、全国で実施事例が増えてきました。
市内に橋梁が多い千葉県君津市では、2020年度から市職員がドローンの操縦・撮影から診断までを行うドローン橋梁点検の本格運用を開始。5年間で千万単位のコスト削減が見込まれているそうです。
トンネル
トンネルの点検も、天井や壁面など高い場所の点検が難しいことや、通行止めをともなうため迅速に作業を行う必要があり、ドローン点検のメリットが大きいです。
ただし、トンネル内はGPSやGNSSなどの電波が届かないことが多く、機体の位置をシステムで確認できないうえに暗所でもあるため、パイロットには高度な操縦技術が求められます。
それでもトンネル内の工事や点検は重大な事故につながるリスクが高いのでドローン点検の需要は高く、電波が届かない環境下で自律飛行できるドローンの開発が進んできています。
メガソーラー発電施設(太陽光パネル)
メガソーラーは行政(自治体)だけではなく、民間企業の主導でも設置・管理されています。
2017年に改正FIT法が施行され、メガソーラー発電事業者に保守点検が義務付けられたことで、ドローン点検が急速に普及していきました。
大規模なメガソーラーを目視で点検するのは大変な手間がかかりますが、ドローンなら少人数で効率よく点検できますし、赤外線カメラ付きのドローンを使えば目視で確認できない異常を検知することも可能です。
屋根や水上に設置されたメガソーラーでは、さらにドローンの有効性が高くなります。
その他の発電所
火力・風力・水力発電所でもドローン点検への期待が高まっています。
発電所のドローン点検はコスト面や安全面のメリットが非常に大きい一方で、強風などの影響を受けやすいため、広く普及するためには機体性能の向上が必須となりそうです。
鉄塔・電柱・送電線
鉄塔や電柱、送電線などの点検にもドローンが使われています。
ただし接触すると大事故につながるため、ドローンを飛ばすときには「近接作業打合せ」を行ったうえで、鉄塔・電柱・送電線とドローンの間には30m以上の距離をとらなければなりません。
離れた場所から撮影して点検・診断するには高性能カメラを搭載したドローンが必要ですが、それでも高倍率スコープやヘリコプターを用いた従来の点検方法よりは、大幅にコストを抑えることができます。
また、鉄塔や電柱に昇る必要がなくなり、作業員の安全も確保されます。
工場・プラント
広大な敷地の中に高層建築物や煙突・蒸留塔などが集まる工場・プラントは、ドローン点検が最も役立つ場所のひとつです。
高所に加えて熱やガスによる危険エリアも多い工場・プラントですが、ドローン点検なら安全に点検作業を進められるほか、短時間で点検できるので長期間停止する必要がないというメリットもあります。
マンション・ビル
建物の外壁や屋根は、紫外線や風雨で劣化して錆やひび割れが起こるので、安全のためには定期的な点検が欠かせません。
しかし、高層建築物の点検には大規模な足場を組むためのコストが膨れ上がるほか、人件費もかさみ、長い工期がかかります。
その問題を解決するために、マンションの定期点検、ビル、ホテル、病院などの12条点検にドローンを使うケースが増えているのです。
赤外線カメラを搭載したドローンを使えば、目視では確認できない壁面内部(タイル裏など)の欠損も温度差で検知できるので、点検の精度が向上します。
屋根
ドローンを使った屋根の点検は広く普及しており、高層建築物だけではなく戸建住宅でも実施されています。
屋根は定期的に点検・メンテナンスするのが望ましい一方で、点検義務のない個人宅などではコストや手間を憂慮して見送られるケースも少なくないのですが、ドローン点検なら低コスト・短時間で済むので人気が高まっています。
人が登らないので屋根が傷まないこと、依頼主が屋根の状態を映像で確認できることもメリットです。
寺院など文化財の屋根点検をドローンで行った事例も全国各地から報告されています。
土木・建築の工事現場
土木・建築の工事現場におけるドローン活用は急増しています。
土木・建築は特に人手不足が深刻な業界で、「スマート土木」「スマート建築」という言葉も出てきているように、IoTやICTの活用に積極的なのです。
ただ撮影して点検するだけではなく、ドローンが取得した映像を3Dモデル化して測量し、事前調査や進捗管理に活用している事例もあります。また、映像や画像は記録としても使えます。
近年はドローン映像をリアルタイムで送るシステムを使って点検・確認を行い、リモートで立会ができる仕組みも開発されています。
床下や下水管
ご紹介したもの以外では、ダム、貯蔵タンク、船舶、観覧車など、やはり高所での実施事例が多い一方で、ドローンは床下や下水管の点検でも使われています。
床下点検では小型のドローンを飛ばしてシロアリの食害や腐食の状態を確認します。下水管点検ではドローン映像を使って全体像を3Dモデル化することで、設備保全計画の高度化にも期待が寄せられています。
床下や下水管は閉鎖空間なので、調査には常に危険がともないます。特に下水管では有毒ガスの発生や酸素欠乏のリスクも高いので、ドローン点検による安全面のメリットは絶大です。